【白髪の科学】ストレスでなぜ白髪になるのか?【理学博士が解説】

今回は白髪ができるメカニズムについて面白い研究があったのでご紹介したいと思います。

ストレスが白髪を増やすメカニズムについてどうぞお楽しみください!

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ストレスでなぜ白髪になるのか?

白髪は加齢によって発生することはもちろん、ストレスによっても白髪ができることはみなさんなんとなくイメージできるかと思います。

しかし、ストレスによってどういうメカニズムで白髪が発生するのかについて説明できる人はほとんどいないと思います。

今回は、ストレスによって白髪ができるメカニズムについて、ホルモン・免疫・その他の観点からご説明したいと思います。

▼Reference▼

B Zhang et al., 2020. Hyperactivation of sympathetic nerves drives depletion of melanocyte stem cells.

 おっくん「今までのイメージとしては、ストレスを感じるとなんとなく白髪増えるなっていうのは感じていますよね。でも、メカニズムがわからなかった。」

 おっくん「なんとなく予測されていたのは、ストレスホルモンとか免疫の暴走などのメカニズムですね。」

 たっきー「それはイメージしやすいよね。」

ストレスで本当に白髪ができるのか?

今回の研究では、まず本当にストレスで白髪ができるのかマウスを使った前実験をしています。

マウスに与えたストレスは以下の3つ

1. 拘束によるストレス(1日4時間の拘束)

2. 慢性的なストレス(床材を濡らしたり)

3. 痛みによるストレス(カプサイシン類似物質を注射する)

これらの実験の結果、いずれの実験でも白髪が発生することがわかりました。

その中でも、3番目のカプサイシン類似物質がもっとも顕著に白髪が発生したため、以降の実験ではカプサイシン類似物質注射によるストレスを与えています。

ちなみに・・・鎮痛剤を打つと・・・

なんと!

白髪にならなくなります!

つまり、痛さによるストレスが原因で白髪になるということですね。

それでは、これから原因と考えられる下記の3つについての実験を見ていきましょう。

ホルモンが原因か?

人間のストレスホルモンはコルチゾールと呼ばれる物質。

マウスのストレスホルモンはコルチステロン。

今回はマウスを使った実験なので、コルチステロンを調査しています。

コルチステロンは副腎で生産されるストレスホルモンで、副腎を切除してやると、ストレスホルモンはできません。

そこで、コルチステロンの影響かどうかを調べるため、副腎を除去する実験を実施しました。

 おっくん「コルチステロンが原因で白髪ができるなら、副腎を除去することで、ストレスがかかっても白髪ができなくなるはず。」

 たっきー「ここまでやったら、白髪ができなくなりそうやな」

実験の結果・・・

白髪はできてしまいました!

つまり、ストレスによる白髪の原因はストレスホルモンではないことがわかりました。

免疫系が原因か?

ホルモンが原因ではないとすれば、免疫系が原因かということで、免疫系について実験をしました。

ここでは免疫系を除去した2種類の遺伝子組み替えマウスを使用しました。

その結果・・・

白髪はできてしまいました!

 おっくん「ストレスによる白髪の原因は、ホルモンでも免疫でもなかったのよ」

 たっきー「今までの有力な説全滅やないかい」

免疫系もストレスによる白髪の発生には関係がないということです。

その他に何が考えられるか?

最も有力と考えられたホルモンや免疫系は白髪の発生に関係がないとなると、何が原因なのか?

他の可能性を検証すべく、ストレスが発生した際、”髪を黒くするための細胞”に何が起きているのかを調べました。

その結果、Adbr2という遺伝子がどうやら関係しているのではないかという仮説が浮上しました。

この遺伝子が何なのかというと、神経の興奮物質を受け取る遺伝子ということが知られています。

そして、この遺伝子は髪を黒くするための色素を作る細胞で、ストレスを受けるとこの遺伝子が多く発現していることが明らかになりました。

つまり、神経が興奮状態になるとAdbr2を持つ幹細胞が反応して、髪が黒くなるということになります。

では、このAdbr2を無くした(ノックアウトした)マウスではどうなるかというと・・・

白髪はできなくなるのです!!

なぜAdbr2は髪を白くするのか?

ここまでで、勘の良い方は思ったことでしょう。

「髪を黒くするAdbr2が反応するなら、白髪じゃなくてもっと黒くなるんじゃ・・・」

そうなんです。これまでの結果からは以下のことがわかります。

ストレスを受ける

Adbr2が反応する

白髪になる

なぜAdbr2が反応すると、白髪ができるのか?

実験の結果、神経の興奮物質を受け取ったAdbr2を持つ幹細胞(髪を黒くする細胞を作る幹細胞)が消失していることが明らかになりました。

過剰なストレスによる刺激によって幹細胞自身がめちゃくちゃ元気に分裂してしまい、幹細胞が消失してしまうということになるそうです。

つまり、髪を黒くする細胞をそれ以上作ることができなくなってしまい、髪が白くなってしまうということです。

幹細胞の分裂を止めたら白髪はなくなる?

以上の結果から、次に行った実験は幹細胞の分裂を阻害してやるというもの。

その結果・・・

本当に白髪にならない!

ストレスによって白髪ができるメカニズムをまとめると、

ストレスを受ける

Adbr2を持つ細胞(髪を黒くするための細胞を作る幹細胞)が刺激される

Adbr2を持つ細胞(髪を黒くするための細胞を作る幹細胞)がめっちゃ分裂

Adbr2を持つ細胞(髪を黒くするための細胞を作る幹細胞)が消失

髪を黒くするための細胞を作れなくなる

白髪になる

こんなメカニズムがあったんですねー。

おまけ:ストレスは老化を早める

 おっくん「今回の結果から、ストレスによる神経の興奮が細胞の過剰な分裂を引き起こすということがわかりました。」

 おっくん「これは非常に興味深いことで、言い換えれば老化を進めているという見方もできます。」

これが全ての臓器で起きているのであれば、全身の臓器に対してもストレスによって加齢が促進される可能性も考えられます。

 たっきー「実際、ストレスが多い人は老けやすかったりするし、こういう原因も考えられるのかもね」

みなさん、老けないためにもストレスの少ない生活を送りましょ〜。

ではまた!