ノーベル医学賞を受賞した研究「唐辛子はなぜ辛いのか」
今回は辛味成分の代表でもあるカプサイシンに関して、どのように人間は辛味を感じているのか、またカプサイシンを食べた際の人間への生理的な反応についてお話ししていこうと思います。
2021年10月4日にノーベル医学賞を受賞したカリフォルニア大学サンフランシスコ校のデビッド・ジュリアス氏もこの辛みについて研究をされていました。
みなさんも唐辛子やカプサイシンについてはよくご存知だと思いますが、今回はさらに深い知識を紹介するよ
激辛を食べるための対処法なんかもご紹介するよ。
唐辛子はなぜ辛いのか
唐辛子が辛いのは、唐辛子に含まれているカプサイシンが原因であることが知られています。
しかし、舌がどのようにしてカプサイシンを認識するかなどについては詳しくわかっていませんでした。
今回ノーベル賞を受賞した研究もこの辛みの秘密を解き明かす内容となっています。
カプサイシンとは?
唐辛子の辛みのメインの成分がカプサイシンであることは冒頭でも述べました。
ちなみに鷹の爪1本(1g)の中にカプサイシンは1mg含まれていると言われています。
物質の構造はこんなかんじ
タバスコやラー油、島唐辛子はカプサイシンを抽出した調味料で、カプサイシンは酸やアルコール、油に溶かすことができます。
・タバスコ → 酢(酸)
・ラー油 → 油
・島唐辛子 →アルコール
溶かす液体によっていろんな調味料になっているんですね。
カプサイシンが辛く感じるメカニズム
甘味や塩味など味を感じるためには舌にある細胞に存在する”受容体”を介する必要があります。
もちろん、カプサイシンを感知するための受容体があることも知られています。
これは日本で多く研究されていて、TRPV1という受容体であることが分かっています。
これは身体中の神経細胞で発現している受容体で、舌以外にも胃や腸、肺などにも存在している膜貫通形の受容体です。
この受容体の面白いところは、膜表面でカプサイシンが結合するのではなく、膜の内側でカプサイシンが結合するという点。
なので、激辛を食べたあとに牛乳などを飲んでも意味がないということです。
辛いカレー食った後にラッシー飲んだりするけど意味ないんやね
食べる前に飲むとカプサイシンが膜を貫通しにくくなるため、意味があると言われてるよ
辛いものを食べた後に効果があることとしては冷たい水を飲むなど冷やすことです。
ということはTRPV1は熱さにも反応する受容体ということ?
そう。43度以上で活性化される受容体なんだよ。
詳細にはこの受容体はチャネル(穴)なので、穴が開いてナトリウムなどが流れ込み神経が発火するという仕組み。
これらのことからもわかるように、辛い食べ物は熱くする事で、さらに辛味が増すというわけです。
逆に冷やしてあげれば辛さは弱まります。
そしてこのTRPV1は山椒に含まれるサンショウオールという物質や生姜に含まれるショウガオールという物質にも反応することが知られています。
そのため、山椒は辛さを感じますし、生姜はポカポカするように感じます(実際には体が温まっているわけではないようです)。
このTRPV1、身体中の神経細胞に存在するといいましたが、胃や腸では辛いと感じませんよね?
これは胃や腸の神経は舌の神経とは脳への投射先が違うためです。
じゃあ胃や腸の神経はどこか別の場所に投射してて、別の働きがあるってこと?
そうなのよ。
TRPV1には実は別の役割もあります。
辛いものを食べると汗をかきますよね?あれは実は胃のTRPV1が活性化する事で引き起こされます。
その他にも、少量だと胃酸の分泌が抑えられます。
逆に大量に食べると胃酸の分泌が増え、胃がズタボロになると言われていますのでご注意を。
さらにTRPV1は肛門付近にも多く存在していると言われていて、辛いものを食べると肛門がめちゃくちゃ痛いのはこのためです。
腸も痛くなるやん?
腹痛は腸の蠕動運動が多くなる事で生じます。
腸疾患の人の腸組織を調べるとTRPV1が通常の3.5倍になっているという報告があるのよ。
これによって痛みの神経が過剰に反応すると考えられるね。
腸疾患がある状態で辛いものを食うのは絶対あかんな。確かに俺も大好きな麻婆豆腐食う時は体調がいいときに行くわ。
それは正解
おまけ:カプサイシンダイエット
巷でカプサイシンダイエットが流行ったことがありました。カプサイシンを食べて代謝をあげる事で発汗を促し脂肪を燃焼させようというやつです。
しかし、これを実際に可能にしようと思うと死ぬほどカプサイシンを食べないといけないと言われています。
それでもなんとかカプサイシンでダイエットしたい!という欲望から辛くないカプサイシンの開発が進められています。
この物質がカプシエイトです。
この物質は辛さがカプサイシンの1/1000程度にもかかわらず生理活性がカプサイシンに非常に良く似ているというのが特徴です。
ここで不思議に思ったのよ。辛味を感じるのも代謝をあげるのもTRPV1なのにカプシエイトはなぜ辛さを感じないのに代謝のみ上げられるのかと。
これを調べてみると、カプシエイトはカプサイシンと比較して水溶性が低いことや舌は表皮が厚く胃は薄いことで細胞膜の貫通がしにくいため、舌ではTRPV1が反応せず胃のTRPV1でのみ反応すると考えられます。
これらから確かにカプシエイトはダイエットに効きそうです。
カプシエイトは舌では感じにくく、胃では反応するということなんやけど、ケツではどうなんですか?
俺の読んだ限りではケツが痛くなるとは書いていなかった。
ある程度実証実験はされてて、ケツが痛いってなると商品にされないよね。しかもカプシエイトは分解されやすいので、カプセルで胃に運ぶ必要があるんだって。
肛門に行くまでには十分分解されてるんやな
カプシエイト製品が味の素から発売されているので、ダイエットに興味がある方は一度お試しあれ。