オーガズムだけじゃないクリトリスの隠された機能とは? その1

今回はオーガズムの役割だけじゃないクリトリスの話をしようと思います。

 おっくん「一応言っとくけど、俺は発生生物学者だからね」

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クリトリスの機能はオーガズムだけではない

女性のオーガズムはなぜ存在するのか?

まず、みなさんこんな疑問を持ったことがあるのではないでしょうか?

「女性のオーガズムってなんのためにあるの?」

 たっきー「男性は女性を楽しませるために行為を行っていますからね」

 おっくん「そうなんだけど、生物学的に考えると疑問が残るんだよ」

男性の快感は、射精をするためのトリガーとなるのであって、これを実行するためにオーガズムというものが存在することは容易にイメージができます。

生殖のためにオーガズムが必要であるということです。

一方、女性は生殖において排卵の周期があり、排卵のタイミングになれば受精をすることができるので、わざわざオーガズムを引き起こす必要がないのではないかという疑問が湧いてくるわけです。

しかも、受精に必要なのは膣であって、クリトリスなんて受精に全く関係ないわけです。

そんなクリトリスが存在している理由についても解説していきます。

クリトリスの存在理由

一般的に、クリトリスは快楽のためにあると考えられています。

これまでの研究においてもそのように考えられてきました。

 たっきー「加藤鷹もそう言ってましたね」

 おっくん「加藤鷹は研究者じゃないじゃんw」

 たっきー「ある意味研究者だけどね」

 おっくん「まずはクリトリスの歴史から話そうか」

クリトリスの歴史

クリトリスの最も最古の情報として、1545年にシャルルエスチンという方がクリトリスについての記述を残しています。

その当時は泌尿機能のあるものとして考えられていました。

その後、1559年にレオナルドコロンボという方が、クリトリスは性的な器官であるということを明らかにしました。

 たっきー「1500年代には解剖学的に認識されていたのね」

 おっくん「解剖学的にはめっちゃ後で、1900年代まで判明してなかったんよ」

つまり、クリトリスの研究は最近になって進んだということは覚えておいてください。

クリトリスの構造

クリトリスがどんな形をしているか、みなさんご存知ですか?

我々が見ることのできるクリトリスはこのような形だと思います。

しかし、実際には表面に出ている部分以外にもその構造は広がっていて、このような構造を取っていることが明らかになってきました。

表面に出てきている部分は、男性の亀頭のようなところで、神経が集中していて快感を感じやすくなっています。

クリトリスの発生学

男性も女性も体が造られる際に、生殖器の元になる器官を持っています。

それが「genital tubercle」と呼ばれる器官です。

男性の場合には、精巣から放出されるテストステロンがこの器官渡されてペニスとして発達します。

女性の場合はテストステロンがないため、成長せずに小さな突起(クリトリス)として残ります。

 おっくん「動物界では、メスなのにめっちゃでかいペニス様(よう)のクリトリスを持つものも存在してるんだよ」

 たっきー「ペニス様(よう)ってwww」

クリトリスが大きい動物

クリトリスが大きい動物として有名なものにハイエナがいます。

ハイエナは子宮にいる際にメスであってもテストステロン量が多いために、クリトリスがペニスのように成長することが知られています。

そのため、メスのハイエナはクリトリスが大きいだけではなく筋肉質な体型です。

さらに面白いことに、ハイエナはこのクリトリスに産道としての役割もあって、ここから子供をうむんです。

初産の時にはこれが裂けることで母体が死んでしまうことも多いんだとか・・・。

そのほかにも大きなクリトリスを持つ動物としては、イルカも知られています。

 たっきー「ここテストに出ますよ」

クリトリスの機能

長い前置きがありましたが、いよいよクリトリスの機能について話していきます。

まずはクリトリスを刺激した際の身体の変化についてお話ししていきます。

1. 心拍数が上がり、血圧が上がる。→ 膣内の血流がよくなる。 → 膣内の酸素量が増える。 → その結果、精子の活動が活発になるのではないか?

2. 膣内が湿潤性になる。 → 挿入による痛みを和らげる。 → 受精機会の増加?

3. 膣内の酸性を部分的に中和。 → 精子を生かす?

4. tentingにより子宮が広くなる。

このように、これまではクリトリスには性的な刺激の役割しかないと思われてきましたが、他にも生殖に重要な様々な身体的変化を引き起こすことがわかってきました。

それでは、これらの変化が生殖とどれほど関係するのか見ていきましょう。

クリトリスと生殖

先ほど説明したクリトリスの刺激による身体的変化が、生殖に影響を及ぼす、とりわけ精子を受け入れやすくしている可能性が考えられるわけです。

そしてこの身体的変化というのは、クリトリスの刺激に対して反射的に起きるのではなく、刺激が脳に受け取られて、脳からのシグナルによって引き起こされることがわかってきました。

 たっきー「そのシグナルが何なのかとかはわかってないん?」

 おっくん「それは、幸せホルモンのオキシトシンなどが知られているよ」

動物を使った実験で、快楽によって放出されるセロトニンを阻害するとうさぎでは排卵が30%減少することが明らかになりました。

今回うさぎを使ったという点が重要で、うさぎはクリトリスを膣内に持っていることが知られています。

そして原始的な哺乳類ほど膣内にクリトリスを持っていることがわかっています。

そのような動物は、交尾によってクリトリスが刺激され、これにより排卵が誘導されるに違いないと研究者は考えたわけです。

そもそも動物はいろんなところを徘徊していますから、オスとメスが出会う機会もまちまちになります。

その様な種では、オスとメスが出会った瞬間に交尾して子孫を残す必要があるため、周期など待っている暇はありません。

そのため、交尾がシグナルとなって排卵を促す仕組みを持っていた方が有利であったと考えられます。

逆に、人間など同じ場所に止まって集団生活をしている種の場合、オスとメスが遭遇する割合は頻繁にあり(そもそも同居しているので)、交尾による排卵が必要ではなくなり、排卵を周期的にするような作りになったのではないかと考えられています。

その結果、交尾によるクリトリスの刺激は必要なくなり、膣外に出てきたとも考えられます。

おまけ:クリトリスは人間の生殖には影響しないのか

これまでの話で、やっぱりクリトリスは人間の生殖には関係なさそうだと思ってしまいます。

しかし、多くの哺乳類においてクリトリスの刺激は生殖に重要な機能であり、人間においてもクリトリスの刺激によって、排卵以外のところで生殖に関係している可能性があるのではないかということは十分考えられます。

この生殖に関わる機能については次回の記事にお話しすることとします。

それにしても、妊活をされている夫婦では、子供ができるまでに平均して10ヶ月ほどの時間がかかると言われています。

そのように妊娠を望んだ場合には、なかなか子供を授かることはできないという現実があります。

その様な中で、子作りを続けることは夫婦お互いに気が滅入ってしまうこともあるでしょう。

今回皆さんにご紹介した最新の知見では、快楽というのが実は妊娠の確率を十分に上げる可能性を秘めているということがわかってきているわけです。

子供を望む世の男性諸君!しっかり奥さんを気持ちよくさせてあげるように!

ということを最後に強く申しておきたいと思います。

ではまた!

REFERENCE

Roy L et al.,2019.The Clitoris—An Appraisal of its Reproductive Function During the Fertile Years: Why Was It, and Still Is, Overlooked in Accounts of Female Sexual Arousal.https://doi.org/10.1002/ca.23498 https://www.sciencealert.com/contentious-review-suggests-a-fresh-new-role-for-the-clitoris-in-the-mystifying-female-orgasm Mihara P et al.,2019.An experimental test of the ovulatory homolog model of female orgasm.https://doi.org/10.1073/pnas.1910295116 https://theconversation.com/all-female-mammals-have-a-clitoris-were-starting-to-work-out-what-that-means-for-their-sex-lives-114916