魚も音でコミュニケーションをとっている
早速ですが、皆さん魚も音を出してコミュニケーションをとっていることをご存じでしょうか?
水中でコミュニケーションをとることで有名な生き物としてはイルカがいますが、実は魚類も音でコミュニケーションをとっているということが最新の進化の研究からより鮮明に明らかとなってきましたのでご紹介したいと思います。
参考文献
Rice A et al., 2022. Evolutionary Patterns in Sound Production across Fishes.
魚が音を出すメカニズム
我々人間は声帯を震わせて声を出したり、手を叩いて音を出したり、、、音を出すことで相手とコミュニケーションをとることができます。
犬など陸上の哺乳類も吠えたり鳴いたり音を出すことで意思疎通を図ります。
しかし、魚などの水中生物では我々がその音を聞くことがほとんどないこともあってか、長らく音を出す生き物は大変珍しいものだと考えられてきました。
しかし、最近の研究で実は音を出す水中生物はそんなに珍しいものではないことが明らかになってきたのです。
それではどのようにして水中生物は音を出すのでしょうか?
水中生物が音を出すメカニズムは大きく2パターンあります。
1.浮き袋を振動させて音を出す
まず一つ目は浮き袋を振動させて音を出すという方法です。
脳から出た神経細胞が浮き袋に接続する筋肉につながっており、自らの意志で音のピッチや長さを調節することができます。
この神経回路は人間の発生や鳥のさえずり、カエルの鳴き声などと同じ回路が使われていることも知られています。
この手法をとる魚としてはカサゴやイシモチ、ホウボウといった魚が有名です。
カサゴを釣ったことのある方なら、釣った際に”グウグウ”音がなっているのを聞いたことがないでしょうか?
また、ホウボウはその鳴き声にちなんで名前がつけられたと言います。
浮き袋を使って音を出すイサリビガマアンコウの鳴き声がこちら
ロングスパインスクォーラルフィッシュの鳴き声はこちら
2.体の一部を擦り合わせて音を出す
2つ目の音の出し方は、歯やヒレ、骨などを擦り合わせたりぶつけることで音を出す方法です。
この手法をとる魚としては、フグやクマノミ、ギギといった魚が有名です。
これらの魚は歯を擦り合わせたり、胸ビレの棘を骨と擦り合わせたりして音を出します。
YouTubeにギギの音に関してわかりやすい動画を出されている方がおられましたので、拝借します。
魚が音を出すことには意味があるのか
それでは今回の論文の紹介に入りましょう。
今回の論文は、音を出す魚の研究をまとめた総説になります。
魚の分類分けはかなり進んでおり、音の出し方などの特徴から魚が音を出すことの進化を突き止めようという試みです。
現存する3万4千種もの条鰭類の音声データに関する情報を収集しました。
条鰭類とは硬骨魚類の大部分を占める魚類で、ハイギョ(肺魚)やシーラカンスといった肉鰭魚類の姉妹に位置します。
その結果、60科で浮き袋による発音、39科で骨格による発音をしてることを明らかとし、ナマズを中心とする18科ではこの両方を使って発音しているということが判明しました。
この結果から、条鰭類の約3分の2の種がなんらかの形で発音するということがわかったのです。
ほぼ全員音出してるやん
魚の発音は進化している
今回の研究では、収集した魚の音声データを使ってマッピングという方法で進化についての調査をしました。
その結果、近縁の種では多くの場合遺伝的に近い意味合いを持つ可能性が非常に高いという結果が示唆されました。
この図はマッピングした結果を示したもので、上が骨鰾類で下が真スズキ亜類です。
骨鰾類はナマズ目、コイ目、ニシン目、カラシン目といった種類の魚類が含まれる分類で、真スズキ亜類にはスズキ目、フグ目、タイ目、アンコウ目といった魚類が含まれます。
この図では青色ほど遺伝的に発音行動が祖先であることを意味しており、真スズキ亜類ではかなり遺伝的に保存されていることがわかるかと思います。
さらに、それぞれの品種で発音メカニズは少なくとも33回は進化していることも今回の結果から判明しました。
進化の過程において意味のないものは自然淘汰で無くなっていくのが一般的であり、今回の結果から発音することは進化の過程で非常に意味のあることだと示唆されました。
まとめ
実は多くの魚が音を出しているということは驚きました。
これまで音を出す魚は珍しいとされ、ホウボウやギギなど名前の由来になっているものも存在しているほどです。
しかし、魚も我々と同様に音を使ってコミュニケーションをとることが実は一般的であるという事実は非常に興味深いものですね。
皆さんも魚釣りでもしていろんな魚の鳴き声を聞いてみてはいかがでしょうか。