アブラムシがアリを操作する
アブラムシの天敵がてんとう虫ということはみなさんご存知でしょうか?
アブラムシを見たことのある方なら分かると思いますが、めちゃくちゃ動きが遅いんです。
というか動いてるのか?と疑うほどほとんど動かないんです。
そんなアブラムシが天敵から身を守るために編み出した方法が共生です。
参考文献
Kudo T et al., 2021. A symbiotic aphid selfshly manipulates attending ants via dopamine in honeydew.
アブラムシがアリの餌を出す
まず前提の知識としてアブラムシは植物から栄養を摂取する際、過剰に摂取したグルコースを”甘露”と呼ばれる排泄物として排出します。
この甘露は他の昆虫の餌にもなっており、アリもこの甘露を食糧として摂取しています。
アブラムシがいなくなるとアリの食糧がなくなってしまうということです。
アリはアブラムシを守る
アブラムシには天敵がいます。
それがみんな大好きてんとう虫です。
小学生の頃、てんとう虫を探していたらそこにアブラムシがたくさんいたのを覚えている方も多いでしょう。
あれはてんとう虫がアブラムシを食べにきていたのです。
可愛い見た目して意外と凶暴なんですね
このことをよく思っていない奴がいます。
アリです。
アリは自分達の食糧を供給してくれるアブラムシがいなくなると困ってしまいます。
そのため、アブラムシがてんとう虫に襲われていると、てんとう虫を攻撃して撃退しようとします。
アブラムシはアリに食糧を与え、アリはてんとう虫からアブラムシを守る共生関係にあるということです。
アリがアブラムシを守るこのような現象から長らくアブラムシはアリの家畜的な印象を人々に持たれていました。
アブラムシがアリを操作している?
甘露に含まれるとある物質が明らかになる
北海道大学の研究チームはアブラムシがアリに飼い慣らされているということに疑問を持ちました。
アブラムシの甘露によってアリを操作しているのではないかという仮説を立てて研究を開始します。
まず、アリが摂取した甘露に含まれる成分を調べました。
その結果、甘露にはドーパミンが多く含まれているということが明らかになります。
アブラムシから出ている甘露を調べてもやはりドーパミンが多く含まれていました。
そこで、ドーパミンによってアリが操作されているという可能性を探ることになります。
アリの攻撃性を低下させることに成功
ここでは下記の4つの実験を実施しました。
(※4のセロトニンに関しては、甘露に含まれていたため、この影響があるかどうかを確かめるため)
- 人口甘露(ドーパミンなし)をアリに与える
- ドーパミン(濃度段階的に)入りの人工甘露をアリに与える
- ドーパミン入りの人工甘露に拮抗薬(濃度段階的に)を入れたものをアリに与える
- セロトニン入りの人工甘露をアリに与える
実験の結果、1と4では攻撃行動が認められなかった一方2ではドーパミンの濃度に比例して攻撃性が高まる結果が得られました。
さらにドーパミンの拮抗薬(効果を打ち消す物質)が含まれていると、なんとその濃度依存的にアリの攻撃性が低下したのです。
このことから、ドーパミンによってアリの攻撃性を高めていることが示唆されました。
アリが薬漬けにされていたんだね
まとめ
いかがでしたでしょうか?
これまでアリの家畜として考えられていたアブラムシがなんとアリを操作しているという事実は非常に興味深いものでした。
生物はさまざまな方法を用いて種の保存に向けた行動をとっているということがわかる非常に面白い研究だったのではないでしょうか?
普段何気なく見ている生き物たちの行動も詳しく見てみると面白い発見がありそうです。
ぜひみなさんも疑問に感じた生き物の行動があれば調べてみてくださいね。
ではまたー