【ネオニコチノイド】あなたは農薬を飲んでいる

農薬と聞くと、「海外産の野菜は怖いから無農薬の国産野菜を買おうかしら?」なんていう健康に気を使った主婦の方々多くもおられるのではないでしょうか。

我が家は無農薬野菜を買っているから、農薬については知らなくても大丈夫!と思ったあなたにこそ今回の記事はしっかり読んで頂きたいと思います。

今回は農薬の最新の研究と日常に潜む農薬についてお話ししようと思います。

参考文献

Calvo-Agudo, M., 2021. Neonicotinoids from coated seeds toxic for honeydew-feeding biological control agents.

Takamoto A et al., 2019. Concentration of neonicotinoid insecticides and their metabolites in Japanese bottled green-tea beverages and their safety evaluation.

動画でも見れます

ネオニコチノイドの歴史と効果

今回の主役の農薬はネオニコチノイドと呼ばれる農薬です。

この農薬は一般的に農業におけるアブラムシやカメムシといった害虫を駆除するのに使われる他、家庭用のゴキブリやダニの駆除薬などの中にも使われているメジャーな農薬の一つです。

1992年、日本において世界で初めて農薬として登録された農薬がネオニコチノイド。

ネオニコチノイドはクロロニコチニル系の神経伝達物質阻害剤であり、神経伝達物質アセチルコリンの受容体に結合することで、神経細胞の興奮を続けさせることで害虫を死滅させます。

この物質のすごいところは、古くから農薬として使用されてきたニコチンや硫酸ニコチンと比較して人間への悪影響が少ない点で、この特性から国に農薬として初めて認められたわけです。

昆虫には高い毒性を示すが、他の生物(ここでは人間)には弱い毒性しか示さないことを選択毒性と言います。

ネオニコチノイドの優れているところは昆虫に高い毒性を示す選択毒性があるということだけではありません。

この物質の優れている点は、水溶性物質であるがゆえの植物への高い浸透性と高い残効性にもあります。

植物に撒いたネオニコチノイドは植物全体にうまく広がり、植物を食べにきた害虫に上手く接種させることができます。

さらに残効性が高いため、一度散布すると長期間効果を持続できるのでコスト的にも大変経済的。

このようなことから優秀な農薬として現在も使用されているというわけです。

ネオニコチノイドが生態系に及ぼす影響

ネオニコチノイドがアブラムシの駆除に使用されることは一般的です。

今回の研究では、そんなアブラムシに関する研究がなされています。

アブラムシは、植物から栄養を吸収した際に余分な糖分を排泄するため”甘露”と呼ばれる甘い液体を排出します。

これはいわばおしっこのようなものです。

しかし、このおしっこは栄養豊富であり、ミツバチやアリといった他の昆虫の餌にもなっている物質です。

勘の言い方はお気づきかもしれませんが、この甘露の中にもネオニコチノイドが含まれているということがわかってきました。

甘露を食べたミツバチやアリへの影響も当然考えられるということで、ミツバチの寿命を調べたところネオニコチノイド含有甘露を食べたミツバチはネオニコチノイドを含有しない甘露を食べたミツバチと比較して寿命が減少することが明らかとなってきました。

実際に、日本の一部地域での報告によるとネオニコチノイドの使用開始時期と同時期にミツバチの大量死が発見されるなど、害虫駆除による二次的な益虫への影響も散見されています。

海外においても同様のミツバチの大量死が報告されています。

さらに二次的な影響は、三次的な影響も及ぼす可能性があります。

ネオニコチノイドが使用された付近の水田においてうなぎが減少したという報告もあり、甘露を食べた昆虫を餌とする水棲生物がいた場合、その昆虫の減少により餌が減ってしまうことで水棲生物などの生態系にも影響が及ぶ可能性も考えられています。

ネオニコチノイドの現在と未来

ネオニコチノイドは昆虫にのみ高い毒性を示す選択毒性があるということは前述しました。

しかし最近、この物質が血液脳関門(BBB)を容易に通過するということがわかってきており、急性的な悪影響はなかったとしても、慢性的な影響があるかもしれないということで調査がされています。

研究の現場ではこのような動きがある中、諸外国ではネオニコチノイドの使用を規制する動きが高まっています。

一方、日本では2015年にほうれん草におけるネオニコチノイドの規制緩和をするなど、「世界のネオニコチノイド規制の流れと逆行してる」と批判されるような動きもあるようです。

たっきー

何かしらの生態系への影響があることはおそらく確実ですが、人体への影響についてはまだクリティカルな情報はなさそうだから今のうちに緩和しよう!的な利権がらみの規制緩和なのかどうなのか・・・

あなたもネオニコチノイドを飲んでいる

タイトルを見て読みにきてくださって皆様、お待たせしました。

「なんで私が農薬を飲んでいるの!?」と思ったことでしょう。

2019年の北海道大学の調査では、コンビニやスーパーで売られているペットボトル入りの緑茶や茶葉中には100%ネオニコチノイド系農薬が含まれているということがわかっています。

つまり、緑茶を飲んだことがあるなら絶対に農薬を飲んだことがあるということ・・・。

ただし、基準値を下回る量であるため過剰に心配する必要はないかと思われます。

たっきー

不安を煽るようなことをしてすみません

おっくん

まぁ影響がゼロとは言い切れないからね

まとめ

いかがでしたでしょうか。

生態系への影響に関する論文を読んでいたつもりが、ペットボトルの緑茶に100%農薬が含まれているという思いがけない興味深い情報も入ってきたのでシェアしました。

これまで安心安全だと言われていたものであっても、生態系への影響や慢性的な身体への影響など目に見えにくい形で影響が出てくる可能性を考えさせられる内容でした。

もちろんリスクがあるものであっても、メリットとデメリットを天秤にかけメリットが圧倒的に上回っているのであればデメリットを許容するという判断になることもあります。

そのためにも研究者が研究を進め、ありとあらゆる情報を蓄積していくことが重要だなーと感じさせられもした内容でした。

ちなみに私は”綾鷹派”。

ではまたー。