人間の遺伝子をサルに入れるとどうなるのか?

今回ご紹介するのは、人間の遺伝子をサルに入れるというなんとも物議を醸しそうな研究です!

たっきー

サルに人間の遺伝子なんてめっちゃやばそうな実験やな

おっくん

みんなが一度は考えたことのある実験だよね

科学的にも非常に面白い研究となっておりますので、ぜひご覧ください!

Youtubeでもご覧いただけます

人間の遺伝子をサルに入れるとどうなるのか?

人類は長い歴史の中で複雑な脳を獲得した

今回の研究において重点を置いている点は、人間とそれ以外の霊長類の間で最も大きな違いである「脳の大きさ」についてです。

人類は長い進化の歴史の中で、現在のような脳の構造を獲得することができ、地球上の最強の生物へと進化することができました。

この人間特有の脳ができたメカニズムを知りたいというのが今回の研究のテーマでもあります。

たっきー

脳に関しては不思議な部分も多いけど、人間の脳がなぜこのように発達できたのかは興味があるね

これまでの研究でわかっていた人間の脳特有の現象

まずはこれまでの研究でわかっていた人間の脳特有の現象をご紹介します。

下の図をご覧ください。

人間の脳の構造とその発生過程

左側がみなさんお馴染みの人間の脳の断面図です。

右側は脳の発生過程(お腹の中で成長する過程)の脳の構造です。

身体中の細胞の多くは幹細胞と呼ばれる細胞から分裂して増えていく過程をたどります。

ここで、マウスの脳と人間の脳での違いが生まれます。

マウスの脳では幹細胞から分裂した細胞がそのまま最外面にある皮質板に移動して脳を形成していきますが、人間の脳では幹細胞で分裂してできた細胞が皮質板に移動する途中の白質においても再度分裂することが知られていました(2010)。

そしてこの現象のメカニズムがわかっていませんでした。

マウスと人間の脳の発生過程における違い

そこでこの白質に位置する細胞であるbRGc(グリア細胞)に着目してマウスと人間での違いを調べました。

その結果、人間の脳のbRGcにおいてのみARHGAP11Bという遺伝子が発現していることが明らかになりました。


たっきー

マウスでもbRGc自体はあるの?

おっくん

マウスではbRGcはないのよ

そしてこのARHGAP11Bという遺伝子は今回の研究のキモとなっている人間にしかない遺伝子、つまりサルに導入することになった遺伝子なのです。

ARHGAP11は哺乳類全般が持っている

実はARHGAP11という遺伝子は哺乳類全般が持っている遺伝子です。

たっきー

人間特有じゃなかったんかいな

おっくん

人間特有というのはARHGAP11”B”だけなのよ

人間以外はARHGAP11”A”という遺伝子を持っている

大昔にARHGAP11Aを持つサルの中にARHGAP11Aを2つ持つ個体が生まれました。

そして、数万年の時を経てこの2つあるARHGAP11Aのうち、片方がARHGAP11Bに変異を起こし、現在の人間の脳が誕生したと考えられています。

たっきー

たった一つの遺伝子の違いでここまで大きな違いが生まれるとは不思議すぎる・・・

サルにARHGAP11Bを遺伝子導入したらどうなるのか

ARHGAP11Bという遺伝子が人間の脳を形成する上で重要だということは述べました。

それでは、この遺伝子をサルに導入したらどうなるのか?

実際にこの実験をした研究があります。

今回の研究ではマーモセットという小型のサルを使用しています。

なぜマーモセットを使用したのかというと、現状霊長類の中で遺伝子組み換え実験ができる動物がマーモセットのみだからです。

おっくん

チンパンジーなどでは繁殖から成長までの時間も長くかかるので、実験系が立てにくいためです。

この研究は慶應大学医学部の岡野先生の研究です。

この研究はNatureの表紙を飾った素晴らしい研究成果となっています。

マーモセットにARHGAP11Bを導入するとどうなったのか。

次の図をご覧ください。

なんと、野生型と比較して脳は大きくなり、シワのようなものもできました

シワがあるということは、頭蓋骨に入りきらないということです。

冒頭で説明したbRGc(グリア細胞)に関しても分裂していることが明らかとなりました。

これらの結果から人間はARHGAP11Bを獲得することによって大きな脳を獲得し、高い知能を獲得することができたということが明らかとなりました。

おっくん

ちなみにマウスやフェレットにおいても同様の結果が得られました

たっきー

知能的なものは変化したんかな?

おっくん

今回の研究ではそこまではやっていないね

たっきー

今回の研究では構造が変化することがわかったのね

まとめ

今回はサルに人間の遺伝子(ARHGAP11B)を導入することで、サルの脳は大きく発達することを紹介しました。

たっきー

これをチンパンジークラスでやったら喋り出すとかなったら怖くない?

おっくん

チンパンジーは人と遺伝的にかなり近いって言われてるもんね

たっきー

そうなると倫理的な問題が問われてきそうよね

今後も生物学のさらなる研究の発展が期待できそうです。

今後も生物学に関係する情報を発信して行きますので、YouTubeのチャンネル登録もよろしくお願いしまーす。